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(法改正関連)

特別寄与制度の創設

被相続人に対し、財産の増加・維持に特別の寄与や貢献した相続人がいる場合に、その相続人の相続分にその寄与、貢献に相当する額を上乗せするのが寄与分制度です。

寄与分が認められるのは、相続人であり相続人以外の親族が被相続人の療養看護に尽くしていても、相続人でないため寄与分を認められない。そこで、相続人以外の特別の寄与者の貢献に報いるため特別寄与制度が創設されました。

遺留分の見直し

一定範囲の法定相続人に対しては、遺留分として、相続財産の一定割合を取得する権利が保障されています。(例:配偶者、子供は法定相続分の1/2)

相続財産が不動産だった場合、遺留分の請求をすると結果的に土地を共有することになってしまいます。土地の「共有関係」は権利関係が複雑になる場合があります。

改正後は、一定範囲法定相続人は、遺留分を侵害者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるようになりました。「お金で解決」できるようになったために、土地の共有関係の問題を回避することができます。

また、遺留分を算定する際、被相続人が贈与した財産をどの範囲までとするかについても改正がありました。相続人に対してなされた贈与は、相続開始前の10年間分をさかのぼって相続財産に含めると改正されました。今までは期間は限定されていませんでした。相続人以外への贈与は相続開始の1年前までを相続財産に含めます。(変更なし)

預貯金仮払い制度の創設

相続された預貯金債権は、遺産分割が終わるまでは、各相続人がそれぞれの相続分までであっても単独での払い戻しができなくなっています。

しかし、相続人の当面の生活費や葬儀代、被相続人の債務の弁済資金等、緊急に相続預貯金を払い出す必要もあるため、遺産分割前の預貯金の払い出しに制度が創設されました。

金融機関毎に単独で払い戻しをすることができる額

相続開始時の預貯金債権の額×1/3×法定相続分

だたし、金融機関毎に150万円を限度とする。

配偶者居住権の創設

配偶者居住権とは、家の持ち主が亡くなった後も配偶者が生涯または一定期間引き続きその家に住み続けることができる権利のことです。自宅の所有権を配偶者居住権部分と負担付所有権部分に分け、配偶者は居住権部分だけを相続します。完全所有権を居住権と負担付所有権に分けることで自宅に関する財産価値が小さくなることにより、自宅以外の財産を取得しやすくなります。

例)

・被相続人は夫

・相続人は妻と子供の2

・相続財産は自宅(2,000万円)と預貯金(2,000万円)

法定相続で妻が自宅を相続すると自宅(2,000万円)、子供預貯金自宅(2,000万円)

となり、妻は現金を相続することはできません。

配偶者居住権を設定(1,000万円の評価額と仮定)すると以下のようになります。(配偶者居住権の評価額は、建物と土地、配偶者居住権の存続年数で計算します。)

妻の相続分:配偶者居住権(,000万円)、預貯金:(,000万円)

子供の相続分:自宅の所有権(,000万円)、預貯金:(,000万円)

 妻は自宅に住み続けることができるとともに、預貯金も相続できることになります。 子供は、配偶者居住権の負担付きの自宅所有権を取得します。子供が途中で自宅を売却しても妻は、配偶者居住権を登記しておけば、住み続けることができます。妻が亡くなると配偶者居住権は消滅し、子供が完全は所有者となります。また、相続税もかかりません。相続税の節税になります。デメリットとしては、配偶者居住権は「家に住む権利」であるため、自宅を譲渡したり、売却したりすることができません。子供は、自宅を譲渡、売却可能ですが、購入した第三者はこの家に居住することができません。

配偶者居住権の利用がメリットになるかデメリットになるかは人によって異なりますので、不動産の相続問題が発生する前に内容をよく吟味し、権利を取得するかどうか判断することをおすすめします。

 

相続登記の義務化(令和6年4月1日施行)

所有者不明土地が近年社会問題となっており、事態の解消に向けて不動産の所有者を明確にする相続登記の義務化が決定されました。

相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。 

また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。

義務化の施行日(令和6年4月1日)以前に発生していた相続にも遡及して適用されます。過去に相続した相続登記未了の不動産も登記義務化の対象となります。なお、正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

 

長期間に渡って相続登記をせずに放置した結果、相続人の数が増えて権利関係が複雑になってしまうことがあります。

例えば、所有者である父が亡くなってその相続人が子3人だった場合に、相続登記をしないまま子3人が亡くなり、その子の子(所有者の孫:代襲相続人)が相続人となり、その子の子も死亡して…とネズミ算式に相続人が増えていきます。こうなると、相続人全員で合意して相続登記を行うことは事実上かなり困難になります。

遺産分割協議がまとまらない場合など相続登記義務を履行したくてもできない場合には、「相続人申告登記の申出」の制度を利用しましょう。相続が開始したことと、自分が相続人であることを法務局に申し出れば、それで相続登記義務を履行したことになります。不動産の所有権を第三者に主張するためには、正式な相続登記を申請する必要があります。

特定空き家の軽減税率の適用除外

空き家対策特別措置法の施行により、特定空き家に指定された空き家は、固定資産税の軽減措置対象から除外されることになりました。施行前は、空き家であっても200平方メートルまでの敷地部分に対しては、固定資産税を6分の1に軽減するという規定が適用されていましたが、これが一切なくなるため大幅な増税となってしまいます。

例)

固定資産税(土地・家屋)課税明細書で見ると

土地 評価額:12,000,000円 課税標準額:2,000,000円 税相当額:28,000

2,000,000×1.4%=28,000  軽減税率が適用除外されると12,000,000×1.4%=168,000円と増税となります。

              

特定空き家と判断する基準として、

倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、

著しく衛生上有害となるおそれのある状態、

適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、

その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態 

4項目を挙げています。

暦年課税制度、相続時精算課税制度

暦年課税制度

11日から1231日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないというしくみを用いた贈与方法のことです。

ただし、相続が発生したときに、相続発生前に被相続人から贈与によって受け取った財産がある場合には、受け取った財産を相続財産に持ち戻しを行って相続税額を計算する必要があります。

202411日以降の贈与について、持ち戻し期間が3年から7年に変更になります。7年分の贈与について、相続財産として課税されます。(4~7年前の贈与については、100万円が控除されます。)

 相続時精算課税制度

60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について贈与を行っても2,500万円までの非課税枠があり、限度額に達するまで何回でも控除することが可能で、この金額までの贈与は贈与税がかかりません。また、非課税枠を超えて贈与を行うと、一律20%の税率で贈与税が発生します。贈与者が亡くなると、それまでに贈与した財産はすべて相続財産に加算して相続税の計算を行います。ただし、贈与税として納付した金額がある場合は、その額を相続税から差し引き、差額を納付することとなります。

 メリット

・財産の値上がりが予想される場合に、評価額が低いうちに財産が移転できる

・収益物件(賃貸マンション等)を贈与すれば相続財産の増加が抑えられて相続税の節税になる

デメリット

・一度この制度を選択すると暦年課税には戻すことができない

・贈与された財産の時価が低下した場合、余分な税金を払うことになる

・小規模宅地等の特例の適用を受けられない

 今までは、使い方が難しく利用も少なかった相続時精算課税制度ですが、20241月から適用される改正により、特別控除の2500万円とは別に年間110万円まで基礎控除が認められます。そのため、年間110万円までの贈与であれば、贈与の申告も不要で贈与税もかかりません。また、期間関係なく生前贈与加算の対象になりません。(暦年課税制度は年間110万円以下の贈与でも相続開始前7年以内の贈与は生前贈与加算の対象)

暦年課税には戻すことができない、小規模宅地等の特例の適用を受けられない等、この点は以前の制度のままです。

今回の改正により利用しやすくなりましたが、相続時精算課税制度は慎重に選択すべき制度です。

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